経済に疎い僕でもスラスラ読めた「東芝の危機」

粉飾書籍レビュー

名門東芝の転落人生

東芝と聞けば、日本を代表する電機メーカー。重電メーカーの御三家とも呼ばれ、日立「野武士」、東芝「お公家さん」、三菱「殿様」と揶揄されていたとか。

その上流階級とも言えるお公家さんの東芝が、上層部の相次ぐ経営の失態で、その地位から転落していくという末路が描かれています。

東芝の長きに渡る歴史を変えたとも言われる西室さんから始まり、傍流から社長に成り上がった西田さん、破壊王の佐々木さん、お鉢の回った田中さんまで。連綿と悪弊が見事なまでに受け継がれていきます。

途中で正義感溢れる人が出現していれば、このような悲惨な末路を辿ることはなかったんでしょうが・・・

粉飾

始まりはバイセル取引

後に粉飾と言われたバイセル取引。この取引を主導したのが、後の社長となる田中さんでした。

この仕組を導入すること事態、至極当然といえます。

パソコンのパーツを一括して東芝が購入。スケールメリットが働いて安く購入できるわけですから。

で、組み立てメーカーにそれを有償で提供して、後に完成品を買い取る。安く調達した部品で作られているから、完成品も安く抑えることができる。

が、東芝の場合は、仕入れ値よりかなり高めで組み立て屋さんに有償で提供。で、保証した数よりも少なく完成品を受け取るというもの。コレ事態は違法でないのですが、これがあまりにも行き過ぎたことが問題で、売上よりも利益額の方が高いというありえない実績ががるようになったのです。

この打ち出の小槌を使って、V字回復をさせたり、赤字決算を3日間で黒字決算にしてみせたりと、様々な赤字解消の切り札として乱用していったのです。

で、結果的に数百億円という赤字を溜め込むことになるわけです。

パソコン

他にも色々と粉飾が・・・

とにかく西田さん時代はチャレンジと称して、各事業部に様々な無理じゃねぇ的な売上目標が課せられていました。

赤字にしようものなら、自分の居場所がなくなるという恐怖感からか、粉飾が横行。

キャリーオーバーという手法は、本来支払われる期日に支払わず、利益が出ているように一時的に見せるというもの。

かの大手広告代理店D社も、キャリーオーバーさせられたというのですから、まさか名門東芝が組織にやっているとは思わないでしょう。担当者のボンミス位にしか思われなかったのではないでしょうか。

企業

トドメをさしたWH買収

パソコン部門のバイセル取引と並んで、東芝にとっての致命的なダメージなWH買収でしょう。

市場評価の倍以上の金額で買収。一時は様々な国から原発受注を獲得し、返済は前倒しできるとまで言われていたのに・・・・。

おもいのほか、工事が長引きかつ予定した工事金額よりも倍以上の工事費となり、WHは破産。

M&Aの怖さというのを感じました。今思うと、WHに振り回されっぱなしで、事業拡大といううまみを得る前に終焉を迎えたと言ってもいいでしょう。

原発

生きた企業統治本として参考になります。

この本を通して、外部スタッフによる委員会を設置しても、何ら機能していないことがわかります。

東芝に限っての話かもしれませんが、1人の人間に権力が集中すると、誤った方向に進んでいる時は、誰ひとりとして暴走を止める人とがいないのかと・・・

何度か義憤にかられて、正しい方向に導こうとしていた人がいたのですが、組織の圧力に屈していたのが残念でなりませんでした。

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