水を漏らさぬ国家の構え、平凡な家族が乗り越えちゃう実話の話「バルーン 奇蹟の脱出飛行」

未来を知っていれば、もう少しの辛抱で西側に。

東西冷戦下の東ドイツに住むあるファミリーが、西ドイツに亡命するという実話に基づくお話。ベルリンの壁崩壊が1990年前後だったかと思いますが、それを考えると、もう少し辛抱すれば危険な橋を渡ることなく西ドイツに行けたのにとつづく思いました。

けど、10年も待っていいられないほど生活は苦しかったのでしょう。クルマも1980年前後なのに、日本で言えば1960年代を彷彿させるクルマだったし、映画の中の配給シーンでは、コーヒーが手に入らくなると心配そうに語る主婦もいるほど。

バルーン 奇蹟の脱出飛行

監視社会とはまさにこのこと。秘密警察

SNSが普及し、監視社会になっちゃったと言われることもありますが、当時の東ドイツに比べたら、そんなものは監視社会とは呼べないでしょう。

国民全てが監視者に映り、公園で新聞を読む人、クルマで休憩しているドライバー、街ですれ違う人などなど、誰もが自分を監視しているようで、落ち着けない。

極めつけは、東ドイツの秘密警察ことシュタージュ。亡命やら国家転覆を狙う人たちを取り締まり、国民のプライバシーに何の許可もなく土足で入り込んじゃう。留守宅の鍵を泥棒さながらの7つ道具で開けてしまうくだりには、シュタージュがいかに絶対的存在であることがわかります。

バルーン 奇蹟の脱出飛行

小さな子どももいるのに勇気ある決断

そんなシュタージュというコワーイ亡命阻止部隊がいるのに、西ドイツへの防衛を計画したある家族。ごくごく普通の4人家族で末っ子はまだ小学生位。

なのに、家族揃って亡命とはかなり勇気がいるし、それにも増していかに生活が困窮しているかがわかります。

真夜中に、ブルーンをクルマで運び出し、人が立ち寄らないような森の中でブルーンを広げひざ出発。順調に高度を上げ、見る見るうちに運搬車が小さくなっていく。

シュタージュ達に見つからないように雲の上まで高度を上げるまでは良かったものの、思わぬトラブルが発生。パラシュート自体が水蒸気を含みみるみると重くなり、急降下。

とは言え、そこはパラシュート。ゆっくりと降度を下げたのか、着陸時にでんぐり返し的な横転はしたものの、家族全員無事。後は西側に着陸していればOK。

が、目の前にたちはだかる有刺鉄線を見て、計画が失敗に終わったことを悟ります。

バルーン 奇蹟の脱出飛行

生きた心地がしません。シュタージュに怯える日々

計画が失敗に終わるや否や一目散に出発地点に戻る家族。クルマが見つかってしまったら計画は露見してしまいますから。

幸いにも誰の目にも触れることなく、クルマにたどり着き、証拠隠滅のため巨大な扇風機を沼に廃棄。指紋を残さないよう、手袋をしていたので、捕まる可能性も低い。

西ドイツの亡命という夢が破れ、東ドイツでの生活を余儀なくされた家族の落ち込みは半端なかったでしょう。ママのこれまで通り、日常の生活を送るのよという言葉に、つらいものを感じました。

ところが数日後に、ママが処方している薬をバルーンに置いてきてしまったことに気づきます。処方箋には国民番号的なものが記載されており、足がついてしまう。

シュタージュの執拗な捜査から逃れるため、東ドイツ内で潜伏活動をするのか否か。最終的な家族が取った決断にはびっくりしましたが、それにも増して、これが実話ということにさらに驚きました。

まるで1990年のドイツ代表の不屈の精神を見ているようで、ドイツ人は本当メンタルがタフだなと思った次第です。

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