Amazonもやっている外販
ECで培ったサーバー運用のノウハウをAWSとして外向けに開放したAmazon。今では利益の6割を稼ぐ大黒柱に成長しています。自社の強みと言うことで門外不出という中、気前よくオープンにする姿勢には最初は驚きました。
が、トヨタもハイブリッドシステムを外販にするなど、自社内に閉じ込めるのではなくオープンにすることで自社にとって仲間が増えたり、事業ポートフォリオの拡大にもつながるし、むしろメリットの方が多いといった印象です。
そんな話を思い出させてくれたのが今回のフルカイテンというシステム屋さんのお話です。
フルカイテンの在庫システムとは
フルカイテンが提供するシステムは在庫をAIなどを駆使して適正化してくれるというもの。現在はアパレル企業を中心に導入が進み、クライアントには、オンワード樫山やアシックスなどの大手どころもいます。
アパレル業界は、在庫処理をいかに効率的に回すかが肝。作りすぎては経営の足を引っ張るし、少なすぎては機会ロスを起こしてしまう。セールという伝家の宝刀で繰り出しては、何とかその場しのぎで立ちまわってきましたが、そろそろ限界も見えてきました。
そんな状況の中、救世主と言うと大げさですが、彗星のごとく現れたのがフルカイテンの在庫システムでした。
背筋も凍る3度の危機があったから今がある?
そもそもフルカイテンの前身はベビー用品を扱うオンライン商店でした。2012年に立ち上げ2年間ほどは順調に売上を伸ばしていましたが、ある日、運転資金が3ヶ月分しかないという危機的状況を迎えます。
そこで、どの商売でも広く使われているセールというもので手を打ち何とか危機を乗り越えますが再び運転資金が枯渇という2度目の危機が早々にやってきます。
そこで、売上予測モデルを組み上げ、この分析を元に不良となりそうな在庫品を抽出し、クーポンなどをつけて不良在庫になる前に売りぬくことを考案。この予測システムが見事にはまり、2度目の危機を乗り越えることができました。
こうして、セールに頼らず適正価格で物売りできる仕組みが構築し、これに機を良くしたのか、利用者の裾野を更に広げようと事業拡大に取り組みます。そこで取った策が、客単価を下げて購入者を増やすというもの。
単価を下げれば、これまで購入に至らなかった客も呼び込めるというのはごくごく普通の考え方で、どの商売にも通じるものです。が、蓋を開けてみたら、思ったように購入者は増えない。客単価を下げたことで今度は赤字という3回目の危機を迎えることになりました。
そこで、客単価の引き上げに適した商品を抽出するという機能を追加しました。つまり、裾野の広げるのではく既存客の自社商品シェアをさらに高めていこうというもの。新規ではなく既存客相手の商売に切り替えたというわけです。
客単価下げで行った送料2000円を8000円に戻しつつ、このレコメンド商品攻撃がこれまた見事にはまり、危機に瀕していた事業も再び軌道に乗ることができました。
これ、売れるんじゃない?
3度危機に直面しながら、都度都度、対策を打ってきたことが自社商売を復活させると同時にシステムもどんどんと精度を高め機能を充実させた結果、このシステムは売れるかもということで、外販することとなり、これが見事に大ハマリ。
ベビー用品のオンライン事業は売却して、システム販売1本に集約。この潔さもこれまた素晴らしい。
今はアパレル業界中心ですが、世のオンライン販売で苦戦している企業にとっては使ってみる価値は十分にあると考えます。
それにしても、危機に瀕して、心折れることなく立ち向かっていく社長さんの姿に、深く心を打たれた次第です。