えっ、ビール飲めないの
遠い昔にイスラム圏に旅行した時のこと、現地ガイドと僕達仲間でレストランで夕食をとっていると、何故か現地の人間はコカコーラー。ビールを進めても、満面の笑顔で拒否。その時気づきました。ここはイスラム圏なんだと。
ただ観光者向けにはどの店もアルコールは用意していますが、現地の人は一滴も口にしてはならない厳しい決まり事がありました。
他の国を訪れた友人に聞くと、観光者向けに対してもお酒を用意していない国もあり、僕はまだまだ恵まれていたのかなと思いました。
イスラム圏に焼酎
鹿児島に本社を置く焼酎メーカーの小正醸造に、お酒NGのイスラム圏のクウェートより、「オタクの焼酎を輸入したい」との一本の電話が入り、社内はびっくり仰天。最初は新手の詐欺商売かと思ったそうです。
小正醸造にはノンアルコールの焼酎小鶴ゼロがあり、こちらであればイスラム圏に輸入しても問題なく、クウェートからのオーダーも、この小鶴ゼロ。ただ飲用ではなく、調味料という不可解さ。
日本酒と違い、焼酎は煮込むと風味が失われるのにどうして?と不思議に思ったとのこと。
ダメ元で勝負に出る
そんな理由から最初は躊躇していたものの、同社の専務いわく「イスラム圏16億人市場への突破口が開けば会社の未来は変わる。ダメもとでもいいから力を入れよう」と。
というわけで、リスク覚悟でクウェートへの輸入を決断しました。
これはイケると確信
2014年夏、クウェートへの輸出と同タイミングで同国を視察した小正醸造の専務は、自分の考えに間違いはなかったと確信する場面に遭遇します。
現地では食の欧米化が進み、和食レストランもそこそこ見受けられる。現地レストランでは、小鶴ゼロが調味料として定着しており、現地のコックさんからは料理にコクや照りが出る、大容量ボトルで売って欲しいなどの嬉しい声も聞け、販路拡大の可能性が高まったようです。
先入観排除が成功
2016年は前年比10倍の出荷を見込む小鶴ゼロ。その販路は飲食店からスーパーにも広がり、一般家庭での使用も期待できるまでに。
お酒NGの国はダメという先入観を排除し、挑戦した結果が大きな果実を得ることができました。
クウェートでの成功が確実のものとなれば、周辺の中東国はもちろん、アジアのイスラム圏にも広がるのではと期待も膨らみます。
色々と考えさせられる好例でした。