鉄鋼業界にもCO2削減の波。けどハードル高すぎでしょ。フル水素製法
自動車業界だけが注目されていたけど
二酸化炭素排出削減ということで身近な業界と言えば自動車業界。古くから全世界で取り組みが進められてきました。
削減の本命と目されたディーゼルエンジンは環境に厳しい欧州ではかなり普及していましたがVWの偽装事件で信用を大きく失墜。変わってEVが二酸化炭素削減の本命として注目され今に至ります。
各メーカーともにEVへの本格シフトを表明しており、2030年代には全車EV化というメーカーさえ出てきました。
このように二酸化炭素削減というテーマに自動車業界は長年向き合ってきた訳ですが、鉄鋼業界も実は二酸化炭素削減に古くから取り組んでいる業界の一つ。
その排出量たるや製造業界の約4割というの知り、自動車業界よりも注目されて良いのではと思いました。
鉄がつくられる工程を知り、納得。
日常に溢れる鉄製品の製造工程は、蒸し焼きにした石炭を高炉に入れ、熱風を吹き込む。石炭から一酸化炭素を含むガスが発生。このガスで、鉄鉱石から酸素を取り除く「還元」を行うことで鉄が出来上がります。
この蒸し焼きの工程で、石炭から二酸化炭素が大量に排出されます。
てなわけで、排出元となる石炭の一部を水素に変えた実験も進められていますが、削減量は10%とわずか。
とは言え、政府が2050年に二酸化炭素排出ゼロを掲げたものだから、業界としても新たな手法で鉄づくりを迫られています。
解決方法は、フル水素製鉄という新方式
そこで今、検討されているのが石炭を一切使わず、全て水素に切り替えるというもの。
この手法であれば、二酸化炭素は一切排出されず、水だけが排出されます。
既に鉄鋼メーカー」大手、アルセロール・ミタルがこの技術に約5兆円投じて実用化に向けて取り組むことを発表。
環境に厳しい欧州の企業だけに世の風当たりも相当厳しいのでしょう。
ハードルはとてつもなく高いけど
このオール水素の手法は、これまでの製造工程とは全く似て非なるものであり、実用化には相当ハードルが高い。
中の人曰く、人類に立ちはだかる高い壁と表現するほど。
実用化には鉄鋼業界だけではなく国や他の産業も巻き込んでいかないと実現は難しいとまで言われています。
アルセロール・ミタルが先に実用化するか、それとも日本の鉄鋼メーカーが先に実用化するか、鉄鋼の覇権争いとも言えるのではないでしょうか。
日本のものづくりの底力を見せてほしいと切に願うばかりです。