悲壮感ゼロ。とにかく明るい
血のつながりがほとんどない全くの他人同士が同居するというレアケースの家族。
稼ぎと言えばおばあちゃんの年金。約7万円。日雇い工事現場で働くパパとパートで働くママの稼ぎも失業してしまってほぼゼロ。
普通の家庭なら右往左往して、険悪な空気が流れる所ですが、毎日家で寝ていてもお咎め無し。
なるようになるさという達観しきっている空気感がどこか居心地の良さを感じました。
食事を囲むシーンでも笑顔が絶えない。家族間の会話が途切れない。幸せってお金ではないんだなとしみじみと感じました。
生きるためには犯罪を犯してでも
生活費が逼迫しているということもあり、家族全員で犯罪に手を染めてしまう。
誰も止めることもなく、むしろ、その盗んだ商品にケチをつけてもっと良いものをパクって来いという始末。
それを子供も巻き込んでやってしまうというのですから・・・。冒頭のスーパーの万引きシーンではちょっとドン引きしてまいましたが、作品が見ていく中で、どこか生きるためにはしょうがないかなという気持ちにも変化が。
どこかで店のスタッフに捕まるなよと応援していました。
とは言え、罪の意識に芽生えた息子によりこの生活は終止符を打ち、一家離散を招くわけですが・・・・
虐待される子供ってこんな感じなの?
そんな貧困に苦しむ家族の元に、もうひとり加わり、それを心から家族が受け入れるシーンにはほっこりさせられます。
親に暴力を振るわれ、身体にはやけどの跡。
なのに、子供は自分が悪いと親の非を認めない。何かやらかしたら、ごめんなさいを連呼する、新しいお洋服を買うとぶたれる。虐待されるこうやってマインドコントロールされるのかと思うと胸が苦しくなりました。
最初こそ笑顔すら見せなかった女の子も次第に家族に打ち解け、一家の一員に。
笑顔を増えて、温かい家族の生活を体験していた矢先に・・・
再び元の親の所に戻らされ、暗いリビングでママに再び怒られるシーンを見て、この子を救って上げたいと思った人は多いはず。
正直泣けます。
観賞後も残る何か引っかるものが
人間ってどこかで矛盾を抱えている生き物なんだなと。
血のつながりはないものの本当の家族以上に愛情に注いでいたのに、万引きで捕まった息子を置いて夜逃げしちゃうと計画した家族。
後に、あの1件は悪かったと素直に謝るパパ。どちらも嘘偽りはないんでしょうけどね。
結局の所、一家離散となった万引き家族。子供の今後の人生を考えるとむしろ良かったとは思いますが、どこかでまたこの家族での暮らしを見てみたいという矛盾が起きてしまうのはどうしてなんでしょう・・・