あの時はCDの素晴らしさだけに目が奪われていました
小中学生の頃までは、レコードに親しんでいた世代。大きなジャケットからレコードを取り出した時のツヤのある盤面と独特な香りにレコードの良さを感じていましたが、カセットテープに録音した途端、その役目は終了。その後は、ジャケットから取り出されることはありませんでした。
そんな時に突如現れたゴールドに光り輝くCDの登場は衝撃的でした。レコードよりもコンパクトなのでプレーヤーにかける面倒がレコードに比べるとグーンと減り、しかも音の劣化もない。
こうして、我が家のレコードプレーヤーはお役御免となり、CDに取って代わることになったのです。
ようやく光が・・・。2009年を底に右肩上がりのレコード生産数。
僕がCDに切り替えたのが1980年代の後半。それから約30年近くの時を経て、今、レコードが世界でものすごく注目されています。
2000年代から200万枚近い数字であったレコードの生産数は2009年には20万枚と約1/10まで落ち込むという悲惨な状況に見舞われます。中の人にしてみれば、レコード撤退も頭をよぎったことでしょう。
が、この2009年を底に右肩上がりを続け、今では鬼のようなスピードで100万枚近くまでに回復。
この急回復をきっかけは降って湧いたような海外発のレコードブーム。このブームに引っ張られるような形で日本でもレコードの良さが再認識されるようになりました。
レコードブームの3つの理由
1つ目は、デジタルとアナログの共存スタイルというものが定着化しつつあるというもの。外出先ではデジタル音源、家ではレコードで音を楽しむというスタイルが増えつつあるようです。
2つ目がジャケットのアート作品化。CDでもジャケ買いというものがあるようにアート性のある作品が多数存在します。レコードサイズのジャケットともなれば、家のインテリアとしても使えます。昨今ではジャケットのみを販売する動きもあるほどです。
最後にレコードのインテリア化。家電にもデザイン性が求められる時代。レコードプレーヤー、スピーカーが、お家のインテリアとして見直されているようです。
これまでは年配の方が多かったレコードでしたが、今では20代にまで広がり、レコードファンの裾野は確実に広がっているようです。
好況でも浮かれない生産者
レコードブームによって、レコードプレーヤーさんやレコード針屋さんも大忙し。注文の大半は海外ですが、ほぼぼフル稼働状態。
注文してから1ヶ月待ちというのは当たり前状態。けど、注文は途絶えることなく受注残だけで1年分は余裕にあるとのこと。
国内では多くのレコード関連企業が撤退する中、この30年間近く、他事業の稼ぎで苦しみながらもレコード事業を継続させてきました。
その経験もあってか、事業拡張には慎重。設備投資をして人を増やして増産だというのが一般的ですが、そのような選択をしない所が堅実だなという印象を受けました。
温故知新というトレンド
レコードに限らず、最近ではカセットテップが注目を集めたり、インスタントカメラのチェキが流行ったりと、過去のものがリアルタイムで体験してこなかった世代にとっては新鮮に映るようです。
となると、次なるトレンドはVHSビデオ、それとも家庭用の固定電話、はたまたアナログテレビ・・・。
無機質なプロダクトに対する反動が、このようなトレンドを生んでいるのかと思った次第です。