ナチス兵にスポットを当てたのが新鮮
これまで多くのナチス映画を見てきたけれど、その多くは悪者として描かれたものばかり。けど本作はナチス兵を主役に“いい人”として描かれています。
その主人公とはバート・トラウトマン。イギリスとのある戦いで捕虜となり、そのまま本国を離れイギリスへ。ドイツが敗戦するまで捕虜収監所での暮らしを余儀なくされます。
食品店オーナーの目に留まったことで未来が開ける
収監所でよくある古参者のマウント攻撃や新人に対するいじめなどなど、最初こそ戸惑いを見せたバートでしたが徐々に収監所の生活にも慣れ、仲間とのタバコを賭けたPK戦遊びに興じていた時にある紳士の目に留まります。
この紳士は収監所と取引のある食品店オーナーで、かつ地元サッカーチームの監督。
チームの成績はと言えば、リーグ落ちの危機に瀕死する弱小チーム。何とかチームを立て直せないかという矢先にバートの類まれな才能を目にします。
早速、収監所に賄賂を送り、彼を自分のチームのキーパーに据えます。
身内からも差別的な扱い
当時は終戦間近でドイツはイギリスにとっては憎き敵国。親類、仲間が殺されたということで、バートは激しい罵りや差別を受けます。
自分をスカウティングしてくれたおじさんの家族からも、ナチスを雇うなんてありえないと反対の声が上がります。
が、そこは紳士たるおじさん。周りの雑音など一切気にせず、バートを擁護し続け、試合に集中するように努めます。
まさにシンデレラストーリー
バートの活躍により下部リーグへの降格をまのがれたチームは、そこから破竹の快進撃を続けます。
その活躍を知った当時の1部リーグのマンシティが視察に訪れ、バートに入団テストを受けるよう働きかけます。
こうして彼は街の小さな弱小チームから国内屈指のチームへと駆け上がっていきます。
絵に描いたようなシンデレラストーリーですが、これが実際に起きた話というのですから驚きです。
幸せの代償・・・
マンシティへの入団が正式に決まったものの、国内ではまだ反ドイツ感情が強く、厳しい差別を受けます。
スポンサーが降りるぞという騒ぎまで発展しましたが、ある団体が、この状況に物申し、彼を支援することを発表。
すると潮目は代わり、バートの活躍も相まってチームを代表する人気選手へ。
こうして幸せの絶頂を噛み締めていた矢先に、子供が交通事故に遇う悲劇に見舞われます。
兵士時代に、目の前で子供が銃殺さてしまう事件があり、この時自分が止めていてれば助かることができたのでは、心の奥でずっと罪の意識を感じていました。
その見過ごした罪が今になって降り掛かったのでは自分を攻めるようになりサッカー選手を引退しようとまで思いつめてしまいます。
そんな彼を支えてくれたのが収監所時代の鬼教官の言葉であったり、奥様の目の醒めるような一言だったのでしょう。
こうして彼は再びピッチに立つことを決意し、最優秀選手賞を獲得するなどイギリスサッカーに名を刻むほどの名キーパーとなったのでした。
久々に一気見するほど面白い映画に出会えました。