真山仁の「マグマの奇跡」を思い出す
ハゲタカの著者で知られる真山仁先生の作品に「マグマの奇跡」というエネルギー問題を扱った小説があります。こちらは温泉観光街の地域住民と地熱採掘者との間で激しい争いが引き起こされます。
その小説の言わば米国版と言ってもいいでしょう・・・
シェールガスで騒がれてはいるけれど・・・
シェールガス革命で沸き立つ米国を舞台にした作品。この革命も現在の米国の好景気を支えているとも言えるでしょう。
が、現場レベルでは地元と採掘会社間での摩擦が絶えないのも事実。採掘される地域としては街の経済復興で賛成組みの人と昔ながらの先祖から代々引き継ぐ土地を手放すことのできない反対組と意見のズレが生じ、そうカンタンに採掘できない事情があるそうです。
言葉巧みに説得する採掘者
では、土地を買収の手法ですが、これが恐ろしく地味で大変な作業です。一軒一軒、地主さんを回りこう言う訳です。「足下の大金を掘り起こそう」と。そうすれば子供達を大学に進学させることができるし、今よりも暮らしがグンとラクになる。何もせずに毎月大金が転がり込むと。
で、大概は採掘者のこのインパクトある言葉に共感し、わかりました。土地をお宅に売りますとなる訳です。
採掘者側も地主の急所をよーく調査しています。農業だけでは生活が苦しいことは把握済み。弱みをついて賛成へと導きます。
ただし、土地を掘った所で実際に天然ガスが出てくる保証などなし。事前調査はあくまでもあるだろレベル。これで採掘できなければ住民は土地を手放すことになり、無一文になるというリスクがあるわけです。
異を唱える住民も織り込み済み
地主との個々の交渉の他に、住民の集まりなどに顔を出して賛成者を募る手法も並行して行われます。が、ネットでここまで普及していると、シェールガスで土地が疲弊したなどという採掘者にとっては耳の痛い話も出てきます。
それを住民から追及されるとなると、グーの根も出ない。ただ、そこは海千山千の採掘会社。危機管理もバッチリ。そんなネガティブキャンペーンをする輩が出てきたら、毒を持ってその活動を止めるという行動に出ます。
架空の環境保護団体をつくり、その人に取って代わり、ネガティブキャンペーンを展開します。しかも、それが採掘会社側の人間。素性を隠して、言わば同僚の仕事を邪魔する行動に出るわけです。
いまいちよくわからんエンディング
ここでよくわからんのが、採掘会社がネガティブキャンペーンを展開する点。せっかく採掘賛成に傾いている住民の中で、一人だけ異を唱えるものが出ただけで、一緒にのかってネガティブキャンペーンを展開する点
ネガティブキャンペーンを張った当事者のミッションは投票阻止。住民投票で明確に反対派が大勢を占めるのを阻止したかったのか。明確にならなければ、6割以上の賛成派を抱えているので、そのまま採掘に持っていけると思ったのか・・・
イマイチ会社の意図が見えにくかったです。もう少しあのシーンに時間を割いてくれれば理解できたのに・・・
二度見しても、全くわからずじまいの作品でした。