コロナ禍きっかけで始まった自分探し
コロナが流行して早2年弱。これまで当たり前だった生活様式が一変。会社に出社せずに仕事をしたり、打ち合わせはオンライン、交通費は都度支給などなど働く環境も大きく様変わりしました。
加えて働く人のマインドにも変化をもたらし、自宅で仕事をする時間が増えたこともあってか、自分の人生を見つめ直す事が多くなり、「一度きりの人生なんだから好きなことをして飯を食って行こう」という意識が芽生え、コロナが落ち着いても会社に戻ることなく退職してしまう人が多いとのこと。
米国では2021年8月の離職率は2.9%、2000年の調査開始以来過去最高となりました。
せっかく景気が回復しつつあるのに、肝心の働き手が戻ってこない。まるで今の日本の飲食業界を見ているようで、忘年会という繁忙期を迎えているのに、人が集まらない、戻ってこない。
そんな深刻な問題が米国では起きており、企業も対策に乗り出し、リスキリングという引き止め策が今、注目されています。
スキルアップもウチなら面倒見ますよ
個人のスキルアップのために様々な教育プログラムを用意しているというのはよく耳にしますが、今、米国で行われているそれは、さらにスケールの大きいもの。
例えばウォールマートの場合、アルバイト君に向けに1日当たり1ドルで大学の学位が取得できるプログラムを改良し、全額をウォールマートが負担。
アマゾンも同様の制度を展開。他にも再教育プログラムなるものを用意し、本業とは全く関係ない内容が含まれているものの、アマゾンは全く意に介さない。
ある倉庫で働くスタッフは、この再教育プログラムでメディカルアシスタントの資格を取得したとか。
この太っ腹感満載の教育プログラムを展開することで、働き手の「好きなことをして飯を食って行こう」というマインドに答えているようにも見えます。
単純な引き止め策じゃないよ「リスキリング」は
このようにリスキリングは、スタッフのスキルアップを目指した再教育プログラムのようにも見えますが、他にも狙いがあります。
1つ目が自社技術の普及。ある意味、自社サービスを普及してくれる宣教師づくりみたいなものです。
例えばアマゾンのAWS関連の研修では、AWSの提供するサービス全般を学ぶことができプログラム修了時点では、立派な宣教師として仕上がっているというもの。アマゾンから独立して将来的にはAWSを取り扱うサービス代理店になることも容易に考えられます。
2つ目がブランディング。黒人や軍従事者などの少数派に向けて教育プログラムなどを容易するというもの。こちらもアマゾンはもちろんウォールマートも用意しています。
昭和世代にもリスキリングの波到来か?
このように米国で今起きているリスキリングとは働き手の引き止め、自社サービスの普及、ブランディングの3つの狙いがあり、きっちり自社の業績アップという視点も盛り込んでいる。
さらに対象は自社スタッフのみならず、社外の人にも広く門戸を広げているというもの。
となると、社外の人は知らず知らずのうちに教育プログラムの中で、その会社の選考の網にかけられ、成績が良ければ雇われる。
これまでの採用という仕組みが、徐々に変化していくことを示唆しているようにも見えます。
とは言え、この年でAWSサービスの習得となると、かなりの覚悟が必要になってくる。これまでの培ったスキルは一旦置いといて、新たなスキルを習得する壁はとてつもなく高い感じがして日本に根づくかなと思った次第です。