今や昔「鉄は国家なり」
国の基幹産業とも言われた鉄鋼業界。自動車、造船、建設、インフラなどなど重厚長大な産業の成長を支えたと言っても過言ではない。
1973年当時の粗鋼生産量は、かのアルセロール・ミタルを凌ぐ1億2000万トン。2015年以降、1億トンに届かない年が続いていることを考えると、鉄は国家なりというのは納得が行きます。
合併、合併で何とか生き残り
そんな鉄鋼業界の最初のつまずきはバブル崩壊。大幅な需要減に見舞われ過剰な人員と設備に悩まされ続けました。
2002年には日本鋼管と川崎製鉄が統合し、今のJFEが誕生。
2012年には新日本製鉄と住友金属が合併して日本製鉄が誕生。
業界内で再編が進み今では、大手どころと言えば、日本製鉄、JFE、神戸製鋼所の3社。
とは言え、世界で存在感を高める中国勢の足元にも及びない状況。1973年当時は世界の2割の粗鋼生産量を誇っていたのに、この凋落ぶりはまるで半導体業界を見ているようで残念でなりません・・・。
量より質へのシフト。日本製鉄
粗鋼生産量では中国勢で大きく水を開けられている状況を踏まえ、量ではなく質で勝負に出たのが日本製鉄。
現在でも既に導入が進むハイテン材。軽いくせに衝撃吸収に優れている二律背反を実現した高付加価値材。
この技術をさらに進化させ、さらに30%軽い軽い車体構造を作り上げました。
今後は50%軽い車体構造、EV版の車体構造を開発するとか。
関係者の関心も非常に高く、イベントに出品時には業界関係者から写真撮りまくられぷりの大盛況だったとか。
軽量化にあたって炭素繊維を使った車体骨格の開発も進んでおり、今後この分野で輝けるか注視していきたいと思います。
EVに不可欠な電磁鋼版
電気エネルギーをロスなく使い倒すのに必要不可欠な電磁鋼版。EV用のモーター部分には、この高付加価値素材が使われていることから、今後の需要増に期待が集まります。
高性能であれば電気ロスをなくし、無駄なく電気を使い倒せる。ひいて航続距離や走りの質にも大きく影響していることでしょう。
既に中国鉄鋼メーカーは量産化に成功し、トヨタへの供給が決まったとか。お客を奪われた格好となった日本製鉄ですが、焦りはほぼない模様。
恐らく世界をあっと驚かせるような量産品を世に送り出す自信の現れでしょう。
汎用品は中国に譲るとして、高付加価値品では日本勢に頑張って欲しいところ。クルマに限らず、家電、交通インフラ、通信インフラへと広がりを見せれば、日本が再び世界の表舞台で活躍することも夢でないでしょう。