魅せる料理。腹を満たせればいい人にとっては理解がむずい
20代の頃に、一度だけ社長連れて行ってもらったフランス料理屋さん。どの料理も少量でお腹を満たせず食べ盛りの僕にとっては、やや物足りなさを感じていました。
とは言え、量は少ないけれど、今でも記憶に残っているのがトマトの冷製パスタ。味付けはトマトだけなのに、こんなにもおいしく調理できちゃうのかとさすがにプロの技は凄いなと感じました。
強烈なワンマンっぷり。もはやパワハラ
で、本作品は、そんな魅せる料理がメインのフランス料理。今改めて見ると、フォークやナイフを入れるのをためらうほどの美しさ。
年を取ると、料理の見え方も大事なんだなと、この映画を見ながらつくづく思いました。
主人公はブラッドリー・クーパー演じる一流シェフ。その道では誰もが知っているフランス料理の伝説のお店で腕を磨き、周りからは一目置かれる存在。
が、ドラッグに手を出してしまい、転落人生を歩み、一念発起でこの度、シェアに返り咲きました。
新店舗を任され、あのシェフが復活とマスコミも大騒ぎ。オーナーも期待値3倍増しでしたが、予想に反して客の入りは低調。空席もあるほどでした。
これにプライドを傷つけられた主人公は、調理場でぶちギレ。部下を罵倒し、皿を投げるわ、料理を壁に叩きつけるはで収拾がつかない状態。
しまいには、「みんな出ていけ」とのたまう始末。昔のコックさんの世界は厳しいとは聞きますが、こんなことが日常茶飯だったことを考えると、コックさんのメンタルってタフだなと感じました。
古いと一蹴。素直に受け入れる謙虚さも
強烈なワンマンシェフかと思いきや、ユーマサーマン演じる子持ちの女性部下の進言に素直に耳を傾ける姿勢には好感が持てました。
低温調理器という新料理道具の誕生で、これまでに比べより鮮度を保ち、しかも調理時間を短縮できちゃうという優れもの。
これを導入したことで、少なからず彼も冷静さを保ち始めました。
ミシュラン三ツ星はそれほどまでに名誉なこと
部下との関係も良好となり、お店もオープン当初の不調が嘘のようにお店は連日満員御礼。
そんな時に、警戒していたミシェランの調査員らしき客が入店してきました。
この報告を受け、シェフの悪いところがまたもや顔を出します。自分が自分がが強くなり、調理場の空気はピリつき、一つもミスも許されない雰囲気。
こうして大きなミスもなく、無事料理を仕上げ、本人も納得のいく料理ができたことに大満足。
が、これが大きな事件に発展するとは思いもよらなかったでしょう。
卓を囲んでみんなでまかない。あれはあれで良かったかも
エンディングは見ての楽しみとして、全体的には最後まで飽きずに見ることができます。退屈しすぎてスマホに手が伸びてしまうということもないでしょう。
飲食店で働いた人にとっては、懐かしさを感じるシーンもあるはず。
僕が懐かしいと思ったのは、まかないシーン。みんなが卓を囲んで食事をするシーンは、チームワークが大事な調理場にとっては欠かせないものだったことがあらためて実感しました。
しかも調理場のボスが一緒にまかないを食べるとなれば、なおのことでしょう。
当時は怖くて口も聞けなかった調理場のボスが、まかない中は優しく声をかけてくれたことを思い出しました。あの人、今ごろ何やっているのかな。