発想が飛び抜きすぎて怖い
人間は、オンギャーとこの世に生を受けてから、よぼよぼになって人生を全うする。この生理現象が逆回転を起こしたらどんなドラマが起きるか。
つまり生まれたばかりなのに老人ズラで中身も老人。で、死にゆく時は赤ん坊。
確かに死にゆく時は、生まれた時のように無垢な人間に戻るなんて言いますが、これを物語として成立させちゃうってのは凄いの一言。
主なあらすじ
生まれた時から老け顔の不幸なベンジャミン・バトンの出生から、死後までの人生を振り返る物語。
語り部は、病に伏して病院のベットで余命わずかな女性。あるルートから手にした日記を娘に読んでもらう所から話はスタートします。
で、その日記の主こそ、今回の主役、ベンジャミン・バトンその人の日記だったのです。
実家が老人ホームだから違和感なし
ベンジャミン・バトンは、老人ホームを経営する黒人夫婦に拾われ、実の子供として育てられます。
彼は生まれつき足腰が弱く車椅子生活。しかも老け顔。けど周りは老人ばかりで違和感ゼロ。むしろ波長が合う。それもそのはずベンジャミン・バトンは小学生にして老人だったわけです。
しわくちゃで禿げ上がっていて、とても「小学生にしては老けているね」といった笑いを超越したほどの仕上がり。
そんな時におばあちゃんとこの施設に住み始めたのが後の嫁さんとなるケイト・ブランシェット演じるデイジーだったのです。
デイジーは老け顔のベンジャミン・バトンを怖がらずむしろ好意的に受け入れ、次第に親密さを増していきます。
泣ける恋愛ドラマ
このデイジーとのラブロマンスという側面もこの作品の泣ける所。
ある意味幼なじみの2人でしたが、ベンジャミン・バトンが施設を出ることとなり、2人は離ればなれに。
ベンジャミン・バトンは船乗りとして、世界をかけめぐり仕事先からまめにデイジーに手紙を出すなりにして近況を常に報告。
それを楽しみにしているデイジーもしばらくすると施設を出てバレーの世界に入り、一躍人気スターへと登りつめます。
声をかける男性は数知れずのモテモテのデイジー。けどいつも心の中にいるのはベンジャミン・バトン。
しばらく振りに再会を果たすデイジーとベンジャミン・バトンでしたが、デイジーのあまりの変わりっぷりにドン引き。しばらく距離を置くことに決めました。
が、2人を再会させたのがデイジーの事故。バレーの世界に二度と戻れなくなった失意の中、施設に戻ったデイジーを待っていたのは、あのベンジャミン・バトン。
心折れまくりのデイジーを暖かく迎え入れ、彼らは結婚することとなりました。
付かず離れずの微妙な関係の2人でしたが、ここにめでたくハッピーエンドを迎えます。
と思ったら、ここからが、それはそれは泣ける話が待っているのです。
老いゆくでなく幼児化していく怖さ
普通の人と成長の仕方が異なるベンジャミン・バトン。つまり歳を取れば取るほど幼児化していきます。
しかもそれまでの記憶がものすごい勢いで失われていく。
まるで認知症を患った患者さんのように・・・。
最愛の人が、どんどんと変容していく姿にしっかりと向き合っていくデイジー。
「あなたは誰?」と言われようとも、ベンジャミン・バトンが赤子となって人生の終末を迎える最後まで面倒見ることとなったのです。
また違った夫婦の愛の形を見たようで、胸に来るものがありました。