捜査の手が最も厳しいだろうに
ナチスによるユダヤ人迫害を扱った作品はこれまで何本か見てきました。そのほとんどはオランダ、オーストリア、ポーランドといった周辺国。ゲシュタポの監視の目も本国に比べればちょいと緩かったことでしょう。
本作品の舞台は首都ベルリン。ゲシュタポの監視の目も周辺国のそれとは比べモノにならないほど厳しいはず。
当時ベルリンにはユダヤ人が7000人にいたと言われていますが、生き延びたのは約2割強の1500人というのですから、ユダヤ人包囲網がいかに凄まじかったことが伺えます。
その恐怖と不安の中で、数年間の辛い潜伏生活を送ったユダヤ人にスポットを当てたのが本作品。
辛い過去を経験しつつも時には冗談を交えながら当時を語る証言者に様々な思いが去来しました。
心強い支援者の支え
一人目は身分証明書をンえ偽造する青年。当時は手に職を持ちナチス関連の工場で働いているとなると収容所行きが免除されたようです。
この制度にのっかり、実際は工場で働いていないのに虚偽の申告したらあっさり認められ強制収容所行きを免除。
父と母は収容所行きとなったものの本人は終戦までゲシュタポに捕まることなく生活を送ることができました。
他には一家バラバラとなり潜伏生活を強いられる羽目になったユダヤ人ファミリーや家族と離れ離れとなり、一人で潜伏生活を余儀なくされたに女子大生のお話など。
ユダヤ人を匿うことで逮捕されるという危険を知りつつも、勇気を持って支援に動いた方々には心が打たれました。
一方で仲間を売る輩も
ドイツ人のこの姿勢にいたく感動したものの、一方では仲間を売るという残念な行為に出てしまう人も
潜伏先を密告して報酬を得る、あるいは身の安全、家族の安全を保証してもらうというもの。
あるユダヤ人は、密告と引き換えに家族の安全を保証することを約束したのに、反故にされてしまい、家族は収容所行きに。
このナチスの人の弱みにつけ込む振る舞い。人の心理状態をたくみに利用していることが伺えます。
食べるのに一苦労な人がいる一方で
潜伏生活中でも、身の危険を感じながらも仕事に従事している姿にはビックリしました。
潜伏先の家族に迷惑をかけられない負い目もあったのでしょう。ある女の子は何とドイツ人将校の家にメイドとして採用され、奥さんも、旦那さんもユダヤ人と知っていながらもそのことには触れず、ドイツ人に接するように普通に振る舞います。
行き過ぎたユダヤ人に対する迫害におかしいと思ったのでしょう。
一方、身分証明書の偽造の青年は、戦時中でなければ成立しないこの場所でプチバブルを経験。
空腹が過ぎてその日を生き抜くのが精一杯な人もいれば、財をなす人もいたのです。
ドイツの敗戦濃厚に歓喜
待ちに待ったナチスの敗戦。ベルリン市街にはソ連兵がいきかい、潜伏中のユダヤ人が手を取り合って喜びます。
これで辛い潜伏生活から解放されると思ったのでしょう。
ユダヤ人のソ連兵と抱き合いお互いに生き残ったことを喜び合う姿にジーンと感じるとともに民族の結びつきは国の壁を超えるのだなと思いました。