赤ひげ死去の衝撃
第一次、第二次十字軍遠征と異なり、国王が自発的に遠征を開始した第三次十字軍。
これまでは法王が音頭を取り、代理人が遠征に帯同するなど宗教戦争という色合いが濃かったですが、第三次十字軍は各国の王が自発的に遠征を決め、法王代理的な人もなし。
この遠征を世俗的遠征と呼ぶ声もあります。
迎え撃つイスラム側の大ボス、サラディンが注視していたのが神聖ローマ帝国の皇帝、赤いひげ。大軍勢で悠々と中央アジアをあたりきり、十字軍国家も目と鼻の先という所で、まさかの心臓麻痺によりこの世を去ってしまいました。
2年もかかったのに1ヶ月で攻略
サラディンもこの報を聞き、さぞ喜んだことでしょう。
一方、十字軍側は、とある海港都市を攻略中にこの報を受け、赤ひげ援軍を期待していたのにまさかの撤退。
さらに厳しさを増し、攻略から2年近くが立ち、これまでかと思っていた矢先にイギリス王、リチャードがやっとこさ到着。
ここから第三次十字軍は息を吹き返し、この海港都市をリチャード到着後、約1ヶ月で制圧することに成功。
いかにリチャードが統率力、カリスマ性に優れていることがわかります。
イエルサレムに向けて連勝街道まっしぐら
これまでの十字軍は、各部隊が独立して、ゆるやかな連携の元、イスラム勢と戦っていましたが、リチャードはこの烏合の衆のまとめに成功。
彼を頂点に、独立色の強いテンプル騎士団、病院騎士団も彼の指示に従うようになったのです。
リチャードの元、一枚岩となった十字軍は、ここから連勝街道を爆進。
イエルサレムまで続く海港都市を次々と制圧していきます。
あの名将、サラディンが負け続きというのですから、いかにリチャードの王としての資質が優れていたのがわかります。
和平成立。両者ともに大人すぎるよ
イエルサレムまで30kmもない都市を制圧し、いよいよイエルサレム奪還が目に見えた所に、まさかの帰国依頼が本国から届きます。
鬼の居ぬ間の洗濯ではないですが、フランス勢に攻められ、本国イギリスは劣勢状態。王様早く来てという懇願メールがリチャードの元に。
散々悩んだあげく、リチャードが選んだのがサラディンとの和平。
イエルサレムは、イスラム勢の国として認めるが、キリスト教徒が巡礼するのは許可して欲しい。捕虜を無償で解放して欲しいなど、色々な条件を出します。
サラディン側も戦続きで疲弊が半端ない状況。彼もこの条件をすんなり受け入れることで、和平が成立したのです。
今から1000年以上前に、このような平和的解決を取れるとは、あまりにも大人過ぎて、名将と呼ばれる方々は違うなと思った次第です。