司馬遼太郎作品、項羽と劉邦
歴史小説好きの人なら必ず通るであろう項羽と劉邦。初めて読んだのが高校生の時。当時、三国志にドハマリ。
三国志ロスを穴埋めしようと手を伸ばしたのが項羽と劉邦。
三国志と比べると個性豊かなキャラが少なく、物足りなさは感じましたが、ダメ男の劉邦が中国を統一させていく物語は強く心に残りました。
三国志最強武将呂布をも凌ぐ項羽の強さ
幾度となくこの2人は戦いを繰り広げていきますが、必ずと言っていいほど、劉邦が負ける。
生まれた時代が悪かったのか、劉邦が弱いのではなく項羽が強すぎるのです。
その強さ、中国の歴史を振り返っても、ほぼほぼNO.1。
三国志最強の武将呂布をも凌ぐ強さじゃないでしょうか。
彼の名を世に知らしめたのが秦軍との最初の戦い。
軍勢としては楚軍の2万に対し、秦軍は10万。5倍もの差があったらまず負けですよ。
ところが、覚悟を決めた人間は怖いもの知らずなのか、猪突猛進の項羽のプレッシャーに抗うこともできず、秦軍は蜘蛛の子を散らすように蹴散らされ、楚軍にまさかの敗戦。
三国志最強武将の呂布でも、この離れ業は無理でしょう。
弱気な劉邦に共感
負ける度に劉邦は口にします。「俺は項羽には勝てない」、「誰か将軍を変わってくれ」と。
リーダーたるもの弱い所を部下にさらけ出すのはまずありえない。
どんなしんどい時でも、部下の手前、凛としていないとと思うわけです。
ところが、この弱さをさらけ出す所が部下の共感を呼びこの人のためなら命をかけて助けてあげようと奮い立たせちゃうのです。
信じるのは自分自身項羽
一方の項羽は正反対。俺についてこいタイプで、とにかく部下を信じない。信じるのは自分だけ。
優秀な人材はいたものの、彼らからの進言に耳を傾けず、優秀な軍師范増を失ったのもそれが原因。
項羽軍の末期には、優秀な部下はほとんどいなく、側近には無能な親類縁者だらけだったと言うのですから、これでは優秀な部下を数多く抱える劉邦に勝てるはずもありません。
勝敗をワケたのは食
結果的に劉邦は一度も項羽との戦いには勝っていません。
というのも項羽が自ら命を絶ったからです。
が、そこまで追い詰めたのは漢軍の戦術が成功したと言えます。
それが兵糧攻めです。劉邦は穀倉地帯を抑えて戦に備える、一方の項羽は兵糧を運び込む距離が伸び切って輸送がうまくいかず、現場の兵糧は底をつき、楚軍は飢えとの戦いを強いられます。
結局これが楚軍にボディブローのように効き、兵士がどんどん離脱していき、兵力はガタ落ち。
鬼神、項羽でも30万の軍勢には勝てず自ら命を絶つことを決心しました。
それにしても、今この作品を読むと対照的な2人のリーダーとしての資質を学びました。
弱さをさらけ出してもアリなんだなと。