僕に響いたワード。「人類資金

首切りに怯える中高年層は後進に範を垂れられず、就職氷河期を経て社会人になった若者たちは保守化傾向を強める。将来の展望はどこからも示されず、それまで外側に向かっていた人の興味は己の内面へと沈降した。大人たちは〝癒し〟を求め、若者たちは〝自分探し〟という現実逃避にモラトリアム期間の延長を求めて、普及したインターネットや携帯電話が心の隙間に刹那の慰めを提供する。
昭和という時代の終わりとも符合するバブルの崩壊は、単にバブル経済の終焉を意味するものではなく、戦後日本というシステムの崩壊でもあった。
「金融、為替、証券……近代資本主義を支えるシステムは、すべてあんたらのご先祖が作ったものだ。金の代わりに紙幣って紙切れを流通させて、貨幣経済の根本を作った中世の金細工師たちも、あんたらの同族だった」  中世ヨーロッパにおいて、貨幣鋳造の仕事を任されていた金細工師の家には、貨幣や金塊を保管する巨大な金庫があった。当時の富裕層は、財産の安全管理のためにこの金庫に金貨を預け、金細工師は替わりに預かり証を発行した。金細工師はその保管料をもらうというのが当初の仕組みだったが、この預かり証はいつしか金貨の代替物として流通し、決済にも用いられるようになった。かくして紙幣が誕生し、貨幣経済はその産声をあげた
九五年のゼロ金利政策以来、海外の金融機関は円キャリー・トレード、すなわち円を調達しての投資案件を加速させて、日本発のゼロ金利マネーが世界中を循環するようになった」しかし二〇〇六年、日銀がゼロ金利政策の解除に踏み切って、状況は変わった。以後、段階的に金利が引き上げられていくことを警戒して、金融市場はジャパン・マネーの調達を減速。逆流した円のせいで日本では一気に円高が進んだが、それより深刻な打撃を受けたのがアメリカの不動産業界だ。ゼロ金利マネーの調達が不可能になったために、金融市場はハイリスクなサブプライム・ローンから撤退し始め、〇六年後半には二十六もの住宅ローン会社が相次いで破綻した。その影響が、それらローン会社の債券を所有する大手証券会社にも飛び火して、アメリカの住宅バブルは完全に崩壊。つまり、日銀によるゼロ金利政策の解除が、リーマン・ショックの引き金を引いた」 No tags for this post.