主役は家康組傘下の菅沼家
宮城谷昌光作品で初めて手にする日本史作品。描かれている時代は信長が生まれる戦国時代から豊臣秀吉が天下を取る頃まで。
信長、秀吉、家康というメインストーリーではなく、家康傘下の家臣、言わばサブストーリーにスポットを当てています。
で、この菅沼家が、当時最強を誇っていた武田軍を撤退させたという歴史に名を残す偉業を達成するまでの話が描かれています。とは言っても、菅沼家も3代にわたる世代交代を経ています。
世代ごとにカンタンに紹介していきます。これを読めば、本作品の理解も進むのかなと思います。
お爺ちゃんの頃の菅沼家のお話
当時は西三河で、一大勢力となっていたのが、家康のお爺ちゃんこと松平清康。とにかく戦上手で、5年ほど長生きしていれば天下も取れていたと言われるほどの逸材でした。
当然、菅沼家も松平清康に与して、西三河の平定、そして今川家の遠江進出に助力していきました。
が、思わぬ落とし穴が・・・。尾張の信長の父、織田信秀を攻める途中で、何と家臣に殺され、天下統一の夢が潰えてしまうことに。そしてこの清康の死から家康が三河に帰還するまでの長い間、松平家の苦難が続くことになるのです。
お父さんの頃の菅沼家のお話
清康の死により、すっかり西三河は分裂状態。群雄割拠の時代を迎えます。西からは織田信秀勢、東からは今川勢。今川もこの頃は世代交代が進んでおり、ボスは今川義元に変わっています。
驚くことにこの頃の今川家の勢いは近隣諸国の間でも群を抜いているほど。それを支えていたのが軍師とも言える雪斎という僧侶。とにかく俯瞰して物事を見ることに長けていて、この人が長生きしていれば、もしかしたら、三河も尾張も今川家になっていたかもとも思います。
この頃の菅沼家は不安定な松平家から袂を分かち、今川勢につくこととなります。
お家を存続させていくためには苦渋の決断を迫られる。
戦国時代の厳しさをを感じました。
そして歴史に名を残す菅沼家
そして、武田軍を撃退した菅沼家の世代に入ります。
この時は歴史の教科書にも乗っている桶狭間の戦いが起きますね。信長の天下統一のきっかけとなるエピソードで語られていますが、アナザーストーリーとして、家康が今川家から独立したり、東三河の豪族達が今川家から松平家に乗り換える大きな転換期でもありました。
さらに今川義元の死は、当時最強の武田軍を動かすこととなり、三河は最大のピンチを迎えます
とにかく天下一だけあって、とにかく強い武田軍。東三河の城がカンタンに落城され、遠江と三河の分断する信玄の戦略は一定の成果を上げていきます。
が、ここで唯一踏みとどまったのが菅沼家の野田城だったのです。
当時の信玄の大軍勢であれば、こんなチッポケな城をスキップして、西進すればよかったのに、意地をはってしまったのでしょう。こんな城をも落とせず天下統一をしても、恥を晒すだけだと・・・。
結局これが信玄による天下統一を潰えさせたと言っても言いでしょう。
結局は、この城攻めで何が起きたかは定かではありませんが、西進することなく再び甲斐に戻り、信玄は帰らぬ人となったのですから。
風は山河なりを読むにあたって
最後の信玄VS菅沼家の戦いは、かなり読み応えがあります。寡兵が大軍勢を相手に一歩も譲らず戦い、その消耗は日に日に武田軍の方が増しているというのですから。
戦国時代のサブストーリーにも胸を熱くするようなドラマがあることを知り、日本史の歴史小説にも面白いと思った次第です。
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