武士の世界も接待が必要
この作品を読んで、接待されたら土産品を持っていきなさいと当時の上司に言われたことを思い出しました。
相手の接待に対する心からのお礼という意味。確かに接待する側でも、お土産を持ってくるお客様もいました。
なんて気配りのきく人なんだろうと。
社会人になると、このようなほぼほぼ形式化された気配り、心配り、目配りの多いことに気づきます。
で、この気配り、心くばり文化というのは、江戸時代の参勤交代によって育まれたのではないかと。
とにかく江戸まで参拝すればいいんでしょう位にしか思っていませんでしたが、これがとてつもなく気苦労が多く、藩の財政を逼迫させるというのがわかるような気がしました。
とにかく土産品が多い
まず大勢で動くわけですから、宿泊費・飲食費がかかります。しかも道中は数カ月にも及びます。加えて人数を減らすことも許されない。減らそうものなら幕府の威光に泥のぬるような行為と厳しいお叱りを受けてしまう始末。
で、行く先々でも接待を行い、返礼品を渡さないといけない。
江戸についたらついたで将軍家へのお土産はもちろんですが、その部下連中、奥方連中にもお土産を渡さないといけない。
これでは確かに藩の財政が逼迫するのは確か。しかも2年に1回。ある意味、参勤交代のためにお金を貯めるようなものでしょう。
そりゃむちゃでしょ、5日で江戸に来い
この作品の主人公は、陸奥・湯長谷藩の内藤政醇。幕府の嫌がらせで参勤交代が終って一安心している所に、また江戸まで来いの無茶な要求。しかも5日間で来いというもの。
時間も、お金もない中で、湯長谷藩の取った行動とは数を思いっきり減らしての10名以下。山道を経由してショットカットして、何とか5日間で江戸にたどり着く偉業を達成するのです。
当時の移動手段と言えば、徒歩か馬。
今で言えば柏から江戸城まで半日で辿り着いているのですから、馬って相当早いんだなと違う意味で関心させられました。
行列人数の水増し
参勤交代もある意味、セレモニー、見世物的なものでした。なので、見栄えよくするためには人数をとにかく増やさないとかっこが付かない。
てなわけで、当時はさくらを使って人数を水増ししていた藩もあったようです。
しかもそれがビジネスとして成立しているというのだから、日本人のこれは商売になるという目利き力は昔から凄いんだなと関心させられました。
まとめ
史実に基づき緊張感ある空気漂う歴史小説が好きな人にはちょっと・・・といった感じがします。
ユーモア系の要素が多分にあり、個人的には作品にグッとのめり込むところまでは行きませんでした。