モックをつくらずデジタルでシミュレーション
クルマづくりの工程で昔見られたモック作業。実物大の粘土細工を職人さんがチマチマと削りながら、狙いとするフォルムに形作っていく様子は、クルマ好きにとってはたまらなく映りますが、今はもうデジタルにとって変わっているのでしょう。
リアルの世界で行われるモック作業をデジタルという仮想空間で行うことで、開発スピードは飛躍的に短縮できました。
このトレンドはクルマづくりに限らず、電機製品、航空機、半導体、建設用機器などなど様々な業界で採用され、さらなる広がりを見せています。
BMWによるデジタルツインに世界が驚愕
2021年4月、独BMWが仮想空間に自動車工場を丸ごと立ち上げ、世界を驚かせました。
この現実の工場を仮想空間に立ち上げることをデジタルツインと呼んでいるとか。
で、この仮想空間上の工場で何ができるかっていうと、生産車の切り替えに応じ従業員の動きや作業ロボットの配置、資材の流れをシミュレーションできるとのこと。
これをリアルな世界で実現させるとなると、相当な時間と労力がかかっていたと思います。検討段階で数ヶ月。実施段階で数ヶ月といった具合に。それが仮想空間でサクッとできてしまう。
しかも様々なパターンで検討することもでき、その中で最良のものを選べることもでき、改悪といった残念な結果になる確率も低くなります。
デジタルツインはリアルな現場を持っている方が有利
黄色のロボットで有名な、あのFANUCも、デジタルツインの導入を着々と進めています。
FANUCの場合、デジタルツインの導入は必然と言ってもいいでしょう。というのも、コンピューター数値制御装置では、顧客からパソコン上で製品開発できるようにして欲しいとの声が昔からありました。
ならば、仮想空間上で、その作業ができるようにしましょうということでデジタルツイン開発が始まりました。
加えて、FANUCはリアルな現場も熟知している強みがあります。仮想空間上で稼働する細かいプログラムも、これ全てリアルの世界で蓄積された知見、ノウハウばかり。それを場所を変えて、仮想空間上で動かすだけなので負担も少ない。
これがリアルの経験が全くない状態で、仮想空間上で工場を作ったとしても、絵に描いた餅に終わるんでしょうね。出来上がりのものがシミレーションしたものと違うなんて笑えない話になってしまいます。
コロナでさらに広がる仮想空間上の工場
このデジタルツイン、BMW、FANUCの他にも、あのシーメンスも力を入れ始めており、この先、さらに広がりを見せると思います。
少なからずコロナが影響しているとも思われます。今では工場も在宅で稼働させている工場もあると聞きますし、となると現実と仮想の境界すらなくなっていくのではないでしょうか。
工場見学も仮想空間めぐりということになるかもしれませんね。ちょっと味気ない感じはしますが・・・。