始まりは2000年。黒船ダノン来襲
2000年春にヤクルト株をしれっと5%購入したダノン。日本でもおなじみの会社ですが、海外ではもっと知名度も高くグローバル企業と言ってもいいでしょう。
そのグローバル企業に不幸にもロックオンされたヤクルト。これが戦いの始まりというのは十分に折込済み。そして20年にも及ぶ静かなる戦いが幕開けしました。
3年後には筆頭株主に。予測通りの展開
2000年に株を購入したダノンの目的は、原材料の調達や研究開発を共同で勧めたいという緩やかな提携話を持ちかけます。
いきなり買収ともなると拒否反応を起こしてしまう。ならば段階的に話を進めればヤクルト側も免疫力がついて、スムーズに買収が進むんと踏んだのでしょう。
で、3年後には19%の株を購入し、筆頭株主に。とうとう本丸攻めを仕掛けきました。
アジアで勢いに乗るヤクルトを取り込むことで、ダノンとしてはライバルのネスレとの差を縮めていきたい。
ヤクルトはその要望を受け入れ、海外事業で提携。かつダノンからの役員も受け入れることにしました。
が、ヤクルトが凄いのは交換条件として株をこれ以上を買い増さないという条件を相手方につきつけたこと。
筆頭株主に物申すという格好ですが、この強気の対応がその先の関係を優位に進めたことは間違いないでしょう。
当初は5年間という縛りを設けたものの、延長、延長で2012年まで引き伸ばしに成功。
出資比率35%引き上げに猛反発
業を煮やした格好のダノンは出資比率を35%引き上げを打診。20%からいきなり拒否権が発動できる35%とは何事かということで、これにも徹底抗戦。
とにかく強気のヤクルトの姿勢、弱腰のダノンといった感じですが、そこまでヤクルト技術が優れているからなのでしょう。
結果的に折り合いをつけるべく、出資比率35%から3割弱へと減らすこで合意にこぎつけることができました。
そして冷戦時代へ突入
2013年には、ホクレン農業協同組合連合が買収防衛に協力する動きもあり、ダノンとの提携関係は解消。が、株を売りに出さずしばらく保有するという中途半端な状態が7年近く続きます。
むしろこちらの方が、ヤクルトにとっては怖いでしょう。相手が全く動いてこないわけですから、対策の立てようががない。
鬼の居ぬ間に洗濯?株放出。ダノン
いよいよ2000年から続くダノンとの戦いも終焉を迎えます。
ヤクルト買収部隊が本丸を抜け出し、次なる買収策を検討している中、本丸ではとんでもない事件が勃発。
米有機食品大手の買収で1兆円近い借金を抱えることとなり、ヤクルト買収部隊は本丸への帰還を余儀なくされてしまいます。
ある意味、米有機食品大手がヤクルトを助けてくれたようなものです。
買収危機の企業の多くは、TOBを仕掛けられてしまい経営権を剥奪されるというのが一般的ですが、ヤクルトのこの攻防はTOBにならなかったものの、乗っ取られない対応として非常に参考になるのではと思いました。