イラク戦争の仕掛け人。「バイス」

バイスハリウッド

新しい実話映画の作り方

これまで多くの実話に基づく作品を見てきました。

実際にあった話ということもあり、フィクション作品に比べ感動もひとしお。

シリアスなタッチで、主人公に対するリスペンクの念がプンプン。ので、主人公の生涯、生き様には共感できるものがいくつもあります。

ところが本作品は、そんなシリアスな雰囲気は全くゼロ。第三者が面白おかしく、かつ皮肉をこめて主人公をいじり倒すというもの。

彼がしてきたことと言えば、不毛なイラク戦争への突入と重い内容なのに、皮肉っぽい語り口なので、どこか彼を強く責められない。

実話に基づく作品も、調理法でこうも変わるのかと新たな発見がありました。

お酒で大学退学なるものの

主人公は、アメリカ史上最悪と言われる副大統領、ディック・チェイニー。

お酒が原因で大学を退学させれるも、ドナルド・ラムズフェルトとの出会いが彼の人生を大きく変えていきます。

あのニクソン大統領の仕えていたドネルド・ラムズフェルト。多忙極まる中、彼を支えたのが、ディック・チェイニー。

自分のことをボスと呼ばせ、やることなくなすこともかなり尖っていたものの、NO.とは言わないチェイニーは次第に、ボスの信頼を勝ち取り、彼の右腕として政治の裏表を学んでいきます。

大統領が変われば、こっちのもの。

ニクソン失脚後は、政治の世界から離れ、民間企業へ転身。

出生街道を爆進し、CEOまで努め、幸せな家族と過ごすシーンが流れ、エンドロールが流れ出します。

えっ、肝心の副大統領就任が描かれないまま終了かと思いきや、その後に年を重ねたチェイニーが再び登場します。

この演出もどこかが皮肉を感じます。このまま民間のCEOに収まってくれていれば、彼の人生も、そして全世界も穏やかに進んでいたのですから。

ブッシュとの駆け引きがたまらない

1本の電話の主は、ジョージ・ブッシュ大統領。

次期大統領が既定路線の彼から、副大統領の打診を受けます。

本音は、チェイニーとしては副大統領をやりたいものの、そう簡単にOKを出したら、ブッシュから軽んじられる。

ので、最初はバッサリと辞退します。

が、ブッシュとしては大統領の仕事を彼なしではこなしきれない。ので、次から次への好条件を繰り出していきます。

こうして、チェイニーは副大統領をOKするのですが、これも全て彼の計画した通りになったのでしょう。

つまり、軍事、外交、経済の全ての範囲で、彼の意のままに操ることができたのでしたらから。

最凶、副大統領の誕生

そして9.11が勃発します。ホワイトハウスはパニック状態。

緊急命令で、航空機を撃墜するか否かの判断を迫られる中、独断で大統領への報告なしに撃墜を指示するのです。

周りにいった議員は、不信をあらわにするものの、そんなことはお構いなし。こうしてモンスター副大統領が誕生することなったのです。

バイス

反省の色全くなしも、ある意味凄い

その後、大量核兵器があるとのことでイラク戦争へと突入していくわけですが、これもチェイニーの指示によるもの。

こうして今なお続く世界のテロによる脅威がはびこる社会へと変容していくのでした。

フセインがなんだかんだって言って、統治していた国がバラバラとなり、ISが生まれ、世界は混乱の渦に巻き込んでいったのです。

が、そんな状況になっても、モンスターは反省の色なし。

米国民からイラク進行は無意味と言われようと、彼は米国民をテロの脅威から守ったということで、自分のしていきたことに間違いはなかった。

ので、謝る必要はないと断言。彼の中の正義なのでしょう。

とにかくここまで強くなれるチェイニーは違った意味で凄いなと感じた次第です。

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