上巻までの流れをまとめ
2万を超す大軍勢の石田三成率いる上方。対するは領民を併せて1000をやっと超す程度の成田家。大方の予想を裏切り開戦を決意した城主、のぼう様こと、城主成田長親。さてどんな戦をするかと期待が膨らむ中、下巻ではその戦いの様子が描かれています。
数十倍の敵を相手にどんな秘策があるのか、城主、のぼう様の本領発揮を期待したのですが・・・
地の利を活かした成田家
そもそも、このお城。周囲を湖または田んぼに囲まれているだけあって、数の優位性を発揮できない。
なので、2万人が一斉に攻め入ることはできず、どうしても相対する時は少人数になってしまう。
歴史上の数多い戦でも、狭い場所というのは、何かと数の少ない側には有利に働くもの。橋の上であったり、峡谷などなど。それに輪をかけて城攻めというのは難儀で、かつ自然の要塞ですから、攻める石田三成も苦労も想像を絶するほどでした。
各個撃破で成田家緒戦大勝利
まずは丹波守の守る城門では、田んぼに囚われた敵兵を見るや鉄砲隊が出撃し、ズドン。面白いように敵方がバタバタと倒れていきます。
加えて鬼神のごときに活躍の丹波守が、敵将のバッサリと一閃するや、敵方の士気はタダ滑り。恐怖におののき逃げ急ぐ兵士続出。
この丹波守の活躍で敵方も撤退を余儀なくされます。
他の戦地でも同様。和泉守兼定の守る城門では、敵兵を引きつけるだけ引きつけ、頃合いを見てせき止めていた川を一気に放出。これって劉邦の家臣、韓信が項羽軍に使った戦術ですが、自然の力を借りて、数に勝る石田三成軍を一掃したのです。
最初の赤子の首をひねるようなものとタカを括っていた上方も、これって手強いかもと見方もかわり、恐怖心が支配されるようになります。
となると、士気も下がりそれまでの積極性がなりを潜めてしまいました。
石田三成の秘策水攻め
この小説で、石田三成の見方が変わった方も多いハズ。
関が原の戦いでは、小ずるさだけが目立ちましたが、今風に言えばかなりまともで、深謀遠慮な面もあります。
緒戦で大敗したものの、あたふたと焦る所など一切なく、秘策の水攻めにかかります。
このスケールたるや今の時代においても、ここまでの土木工事をそんな短納期でできるのかというもの。
荒川と利根川の水を引き込み、お城を水攻めにすべく10kmに及ぶ土手を領民の力を借りて、わずか5日間で作り上げてしまうのですから。
この土木に参加した人数はおよそ10万人。
この人数を集めるにも相当な時間がかかるはず。
が、そこは石田三成。しっかりと高額な日当をつけて、領民達をあっさりと集めてしまいました。
まとめ
この水攻めをのぼう様がいかに破るかが、下巻のハイライト。
そうゆうことねと後で気づきますが、正直この人は天才なのか、素なのかが、未だ判別できませんでした。
とにかく小田原城攻めで上方で落とせなかった城は、この忍城のみということだけは後世にしっかりと伝えていくべきことではと思った次第です。