悲劇の若き王子。ポードワン4世

十字軍物語書籍レビュー

第二次十字軍遠征失敗

第一次十字軍遠征で見事、イエルサレムの解放を達成。悲願達成となったわけですが、慢性的な兵力不足は解放後、100年近くも続き、衛星都市のエデッサがイスラムの手に渡ってしまいました。

これを機に、満を持して第二次十字軍が立つわけですが、これが王様直々に参戦するも、エデッサ奪還はならず、イスラム勢に惨敗。

早々に欧州に帰宅するという惨状で、大いに十字軍国家の人たちを失望させました。

結局のところ、本国に頼らず少ない兵力だけども、皆力を合わせてイスラム勢に対抗しようとなったわけです。

劣勢の中での王位継承

当時のイエルサレム王、ポードワン3世は、ほぼほぼ戦場を渡り歩くほどの忙しさ。ゆっくりと休む時間もないまま、若くして亡くなってしまいます。

そんな中、即位したのがまだ15-16歳だったかと思いますが、ポードワン4世が即位します。

まだ右も左もわからない青年かと思いきや、早速改革に乗り出します。

これまで何かと政治に介入してきた母を政治から切り離しに成功。自分自身で国家を運営する土壌を作ります。

これが弱冠15-16歳かと思うと末恐ろしい。とにもかくにも歴代の中でもピカイチの有能な王様だったことは確かでしょう。

余命数十年という病に侵される

外交面では、イスラム勢との積極的な戦いは避け、有効的な関係を築いていきます。

とは言え、この約束が永続的に続くわけないのは承知済み。

しかも相手は、英雄、サラディン。何を仕掛けてくるかわからない怖さもあります。

加えて、ポードワン4世は、身体が溶けてしまうらい病に侵され、余命わずか。

いつ死が訪れるかわからないという状況の中、十字軍国家を運営していくのです。

最強ライバル。サラディン撃破

そんな彼を助けようと、十字軍内の結束力は高まり、休戦中ながらも小規模な戦はポロポロと発生し、その戦いでは先頭を走って敵陣に突っ込んでいったというのですから、胆力も相当なものだったのでしょう。

あのサラディンとの戦いで土をつけたのも、ポードワン4世。圧倒的に兵数で劣るものの、イスラム勢を撃破したのもポードワン4世の高い統率力があってのことだったのでしょう。

彼が生きていたら歴史は大きく変わっていたかも・・・

彼の素晴らしいところは、後継者育成にも手をつけていた点。

自分が死ぬとなると、お姉ちゃんの旦那が即位することになる。このダメダメ夫が十字軍を支えるとなると崩壊は目に見えている。

てなわけで、姉が再婚前の旦那との間に生まれた子供を弱冠6-7歳ながら、ポードワン5世として、十字軍国家の王位につけます。

自分が亡くなってからの国家運営にまで考えが及ぶ、この素晴らしさ。

もし彼が、生きていたら、その後の十字軍の歴史も大きく変わっていたことでしょう。

とにかく映画して欲しいほどの素晴らしい内容でした。

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